UX DAYS TOKYOが開催する「カームテクノロジー」の講義に参加してきたのでメモ。

カームテクノロジーとは

自己主張しない技術。人に意識されず目に見えない形で支援し、必要な時だけ活用できるようになっている技術。また、コンピューターなどのシステムはそうあるべきだという考え方。 「カーム」は、日本語で「おだやか」などと翻訳される。製品を設計する際、通知や表示方法と言ったテクノロジーとユーザーとのコミュニケーションの取り方も設計する必要があるが、その際に考慮されるのが「カーム・テクノロジー」である。

「ユビキタスコンピューティング」を提唱した、Mark Weiserマーク・ウェイザー氏とJohn Seeley Brownジョン・シーリー・ブラウン氏によって、1996年に作られた。増えていくデバイスが逆に私達の生活で邪魔になることを憂慮した内容が、あらゆるコンピューター製品を生み出した研究開発企業「Xerox PARC」にて発表された。

海外では「カームテクノロジー」に関連するブログ記事が注目され、日本では落合陽一氏も注目しています。

▽「カームテクノロジー」については「UX TIMES」より
https://uxdaystokyo.com/articles/glossary/calm-technology/

引用元: https://uxdaystokyo.com/extend/

スピーカー

Amber Caseアンバー・ケイス
Cyborg Anthropologist

Amber Caseは、人間とコンピューターのインタラクションがどのように、私たちの文化や考え方、世界の理解へ影響を与えるのかを長年研究しています。

MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究施設「Center for Civic Media」とハーバード大学のサイバースペースに特化した研究施設「Berkman Klein Center for Internet & Society」で研究員として2年間を過ごしました。

2012年にはナショナルジオグラフィックの「Emerging Explorer」でベル研究所から「Claude Shannon Innovation Award」を受賞しています。

「.inc Magazine」でもテクノロジー分野の30歳以下で最も影響のある女性として紹介されています。事業では地図に関連したGeoloqiという会社を立ち上げ、その業界大手のEsriに買収されています。

スピーカーとしてはTEDなどで講演を行う国際的スピーカーの一人です。講演のトピックは未来のテクノロジーからロケーションベースのアプリケーションまでと幅広いです。

著書に「カーム・テクノロジー」と「デザイニング・ウィズ・サウンド」があります。

引用元: https://uxdaystokyo.com/extend/

講義のメモ

・世界にあまりのも多くのテクノロジーが溢れてしまったら…?と考えていた
・200億のデバイスがオンラインになる
・スマホもウォッチも多くの通知が出てくる
・シリコンバレーではスマート冷蔵庫の開発も活発
・バナナが腐ったら冷蔵庫から通知が出るようにしたい
・バナナは皮が黒くなるしわざわざ通知を出さなくてもよいのでは?
・カームテクノロジーを生み出した マーク・ウェイザーとジョン・シーリー・ブラウン
・スマートデバイスが必要ではない、スマートな人が必要なんだ
・人生をテクノロジーの捧げすぎてしまう
・シリコンバレーが生み出したデバイスで溢れている
・それは未来の失楽園的なキッチンである
・ハッキングもされるし、音もうるさい
・初期の段階から音を出すデバイスは多く出ている、ケトルなど
・実際どれくらいの音量がいいのか、頻度が良いのかは考えられていません
・実際の世界ではデスクトップと違う、現実は電池も切れるし、接続も切れてしまう
・UXはユーザーがどう使うのかをすべてわかっているわけではない
重要なのは通知を出すときのスタイルをその人が変更できるようにすること
・Connected Animals … 自動でペットに餌を上げる … 失敗例
・リモートの接続が切れたらペットに餌をあげられなくなってしまうから
・多くの人は目新しい技術を好ましく思う
・だが、すべてのものには問題がある
・例えばソフトウェアをDLすれば機能は良くなる、ソフトウェアのサイズは小さければ小さいほど良いよね?
・革のケースも時間が立てば良くなる
・一方新しい技術はどんどん悪くなるのかもしれない
・50-60年代のテクノロジーでマイクが存在する
・これは50年くらい使える、使いやすいし、ボタンがついてる
・クロノス時間とカイロス時間
・クロノス時間が重要なのは同じことを同じ時間で完了すること、そのために必要
・企業の中の時間に似ているかもしれない
・同じものを同じ時間でつくるにはプロセスを変えてはいけない
・カイロス時間はクロノス時間の概念の外にある時間
・規定の時間の概念の外にある時間→夕日を見る、恋をするなど
すべての開発において、人間らしい時間「カイロス時間」を持てるようにフォーカスすべきだと思う
・人間らしい時間を送っているときに通知が来たら、クロノス時間に引き戻される
・多くのデバイスからは通知が送られる
少し邪魔をしてくる技術の真逆のこと=カームテクノロジーが必要、これにより、人間らしい時間をつくることが出来る
・これは「目に見えないテクノロジーである」
・良いテクノロジーは「見えない」
・人間がタスクに集中できて、ツールに集中するのではないから
・金槌は良いツールです、見えないツールではないが、実際に仕事をしているときは仕事に集中できる。金槌には気を取られない。
・見えないテクノロジーにビジネスになると考え、Alexaなどが作られた
・人間に変わって多くのことやってくれるテクノロジーが多く失敗している
・例えば淡々とアクションが続くだけの映画を見ても忘れてしまう、記憶に残らない
・たまごっちがなんで成功した?
・育ててあげないといけない、どうしようもないものを育ててあげるから、面倒がかかるから好きになれた
・高齢者向けのロボット「パロット」→自分が面倒を見なきゃというのが高齢者に刺さった
・ルンバの掃除機は完璧ではない、終わるとどっかに止まってしまう。
・完璧ではないので、人間が助けてあげないといけない、そこで絆が生まれる
・みなさんのために完璧にやってくれるテクノロジーに絆を感じることは難しい
・そういういったテクノロジーには声を荒げてしまう
・あまりに自動化されると重要になるのがカスタマーサービス

・カームテクノロジーの原則について
・テクノロジーはすべてを要求するべきではない、必要なときにだけ要求するべきだ
・眼の前のものは高い解像度で見ている。スマホを見ているとき、車を運転しているとき
・それら操作していても、解像度は低いが周辺は見えている
・周辺の意識から情報を取ることは可能
・日本の地下鉄には特有のメロディがある、これは良いこと
・居眠りしてもメロディで分かる
穏やかである=カームでありながら情報が取れるということ
・電球を天気とリンクさせた商品がある
・ライトの色が変わればそれだけで天気がわかる、意識しなくとも情報が取れる
・「周辺環境の認識」
・もっと多くの情報を知りたければインターネットで見ればいい
・人とマシンのコンセプトに「サイバネティクス」というものがある
・道具を使ったときに、そばにいて使っていた、あるいは横に居て仕事をさせていた
 シリコンバレーでは、最近何でも自動化出来るという考え方がある
・しかし、あまりにも自動化すると人間が困ってしまう
・マシンに人間のように振る舞わせるというのはうまくいかない、気持ち悪い
・なので、初期のコンセプトであるマシンの近くで使うというほうが望ましい
・マシンが仕事の8割を完了させるということは十分考えられる、Google検索など
・最終的に出てきた情報を選ぶのは人間。人間がキュレーターになる
・テクノロジーというのは人間の声でコミュニケーションをとろうとする
・機械の言語は声ではなく、音のほうが良い場合もある
・我々は犬が人間のように振る舞うことを期待しない。

・テクノロジーは少ないほうがいい、間違いが減る
・機械の言語はユニバーサルである。
・良いデザインというものは、ユニバーサルなものをつくるということ
・信号機やトイレのアイコンはユニバーサル
・スマホはユニバーサルとは言えない
・例えばリモートで全部処理させようとすると課金の問題が発生する。
 サーバーもダウンする。
・セキュリティも低い、ハッキングされるかも。
・もっといいデザインは、必ずうまくいくようにすること
・自分でサーバーを設置し、一週間分のデータを蓄積し、自分自身の手でデータを送信できれば最高
・サーバーがダウンしても7日分は確保できるし、ハッキングもされない
・必ずうまくいく良いUXは保証できる
・デザイナーは必ずうまくいくデザインをすること
・障害を起こしたときでも機能するようにデザインする

・昔のプリンターは自力で修理できた
・壊れたときにどうするべきかが出てくると、自分で簡単に修理できるというのは自分で力を得たように感じる
・スクリーンがあれば、文字やイラストで伝えることが出来る
・中身の部品も色分けされており、誰でもわかりやすい。誰でも修理できる。
・最近はどうだろう?
・自分で修理するようにするためには、デザインを気をつけなければいけない
・結論として、良いデザインというのは人々に一番少ない動きでその人の望みを実現させること

・私達は人間らしく生活したい
・未来は、自分でテクノロジーを使うかどうかを選べなければいけない

・通知音について3年かけて本を書いた
・Designing with Sound @amazon
・通知音はなぜうざいのか?
・周波数の問題で、機械から出る音はピーピーピーになった
・人間の耳は感度が高いので、うるさく感じてしまう

・どのように通知を出すのかはユーザーは選択できるようにするべき
・何千というデバイスから通知音で閉じ込められないようにするために

・通知のスタイルを変更することが複雑だとそれはカームテクノロジーではない。
・ソフトウェアで設定すると遅延が生じる
・スマホには物理的に通知をオフにするボタンが付いている
・ソフトウェアよりもハードウェアのほうがそういった配慮がある
・通知のON/OFFは物理的なボタンのほうが良い

・サイドストーリー
・1980年だと90年代にXerox PARCからカームテクノロジーは生まれた
・Xeroxはプリンターを作り、利益を得た
・同時に誰にも思いつかなかったことを研究する部門もできた
・技術者だけが仕事をしているわけではなく、アーティストや歴史学者も雇用した
・一番最初に作られたプリンターは技術者のために作られた
・技術者は全部やりたいと思っていたため、多くのボタンが存在していた
・一般の人が欲しがっていたのは単純な機能だった
・一般向けに提供するとなると、技術者だけでは気づかないことが多い
・私達が忘れていた潜在的な未来をもう一度思い出す
・「現実世界はデスクトップではない」という論文
・完全な接続は現実世界に存在しない
・自然と同じで、何も完璧なものはないという前提
・それを認識しておくと、もっとエレガントで優雅なものが提供できるようになる
テクノロジーそのものではなく、我々との関係が重要